ノースウェスタン大学日本人研究者の会
Northwestern University Japanese Researcher Association (NUJRA)
運転免許取得ツアー体験記
「私が運転するのでみんなで取りに行きませんか」の一言から全ては始まった。ほとんどの日本人が、少なくとも日本では経験しているであろう、運転免許試験というイベント。日本と異なり、アメリカでは特別な講習や仮免許試験というものは存在せず、学科試験および実技試験を通れば半日程度で免許が取得できるのだ。日本で運転している人であれば多少の勉強で通るであろう、と思ってしまうものだ。しかしながら、私の計画した「運転免許取得ツアー」は思いもよらぬ結末をもたらすこととなった。
アメリカの免許試験会場には自動車は常備されておらず、受験者が自ら持っていく必要がある。日本人留学生が自分で運転して持っていく場合は、国際免許証の有効期限内(イリノイ州は渡米後3ヶ月以内)にレンタカーを借りて免許取得に向かうことになる。一方、有効期限が過ぎてしまった場合、または国際免許を持っていない場合には(今回のケース)、免許を持っている人に現地まで連れて行って貰う必要が生じる。更に、今回は新型コロナウイルス蔓延の影響でレンタカー台数が一時的に減少しており、レンタカーを借りること自体も難しいという状況も重なった。そのため、今回はすでに運転免許を持っていた私がアプリを通じた個人間やり取りで車を借りるサービス(具体的な名前を入れたほうが良いと思います)を利用することとなった。
しかし、ツアー当日の朝、自動車を借りるところからすでに歯車は狂い始めていた。約束の時間になっても自動車の持ち主が現れないのだ。アメリカ人は概して時間にルーズではあるが、40分が経過しても音沙汰はなく、電話やメールにも応答はなかった。サポートに連絡をすると、どうやらドタキャンされたことが判明した。一時はツアー中止の危機となったが、私の拙い英語と怪しいリスニング力をフル稼働させてなんとかサポートに電話で食い下がり、別の車を当日用意してもらうことに成功した。しかし、その車は、なんと誰も運転したことがない、Tesla社の電気自動車であった。これが後に運転免許試験受験者を悩ませることとなった。
運転免許試験は、日本人の多くが受験に訪れるシャンバーグの運転免許センター(住むとこドットコムを参照)で受験することとした。事前情報と違わず、人の入りは極めて多かったが、意外にも書類手続きや筆記試験まではスムーズに流れ、約2時間半程度で実技試験まで進むことができた。筆記試験は私の脅しもあり、事前にかなり勉強していたため、全員無事合格できた。しかし、英語に慣れていないのであれば、それなりの勉強は必要だと思われた。
実技試験は運転免許センター周囲の大きな公道の右レーンを走行し、途中で小道に入ってUターンや路側駐車のテストを受けるのが大まかな流れとなる。私が受験した時(1年前)は、路側駐車で幅寄せをしていないことで大減点を受けて冷や汗をかいたものだが、センターラインオーバーさえしなければ合格できるであろうとたかを括っていた。しかし、前述の様にTeslaの特殊な仕組みと試験官の気まぐれ(?)にここから苦しめられた。
TeslaはAT車だが、日本車の様な「クリープ」が存在せず、当たり前かもしれないが、モーターで動くのでアクセルの踏み具合でスピードが決まる仕組みとなっていた。そのため、一人目の受験者は合格こそしたものの、日本の感覚でアクセルを踏んでいたためか、かなりのスピード超過となっており、「お小言」を受けることとなった。また、Teslaはアクセルから足を離すと急速に速度が落ちる仕様となっている。それに十分なれないまま二人目の受験者は挑んだため、「急ブレーキ」を連発することとなり、受験後に「お説教」を受け、更には不合格という結果となってしまった。この辺りから、試験官の我々に対する印象は極めて悪くなっていたと思われた。
三人目および四人目は二人の失敗を踏まえて慎重な実車を試みたそうだ。三人目の運転の是非は分からないが、幸いに試験官が途中で窓を開けようとしてドアを開けてしまうという「チョンボ」をしたためか、特に大きなコメントなく合格することとなった。最後の四人目は、我々から見ても「極めて」慎重な運転で始まったと記憶している。クリープと言えるくらいの速度で施設内道路を回り、右折も完全に車がいなくなるまで待ってから行うくらいに、石橋を何重にも叩いて渡っていた。その結果、、終業時間が迫っていたため試験官が待ちきれなくなったのだろうか、通常より明らかにショートカットしたコースを通って車が戻ってきた。「早く終わったから合格」かと思いきや、のど自慢大会のごとく、途中で評価を打ち切られた末の不合格であったようだ。結果として、今回の運転免許取得ツアーはまさかの合格率50%という散々な結果に終わることとなった。
今回のツアーの反省があるとすると、急アクセル・急ブレーキは厳禁であること、制限速度は超えてはいけないが足りなくてもいけないということ、そしてやはり慣れた日本車(日本車じゃなくても普通自動車であれば良いような気もしますが笑)を借りて試験に向かうべきであるということであろう。もし、慣れない車を借りざるを得なかった場合には、試験前に十分な練習を行ってから臨む必要があると考えられた。しかし、各自の運転を相互に評価し合ったり、試験後に打ち上げができた点ではツアー自体は、私としては有意義なものであった。願わくば、次回は全員合格して欲しいものだ。